例4)アイルトン・セナ、星野一義選手に続く??自動車業界からのフライト挑戦

初フライトへの大空への道・その1 2001.12.24

 それはX'masイブの午後だった。赤坂で遅~い昼食の後、帰宅すべくクルマを走らせ四谷の交差点へ。ここは左端の車線が左折専用、その隣りが左折と直進。私は新宿方面へ左折するのだが、左端の車線は信号待ちのクルマが列をなしていたので隣りの車線を選び、難なく最前列のポールポジションを得る。3秒後、運命の瞬間がやってきた。「これ、直進すると小林さんの店じゃん」

 小林店長に初めて出会ったのは新宿の飲み屋。たまたまカウンターで隣り合わせた。でも、こちとら飛行機模型の趣味はない。いや、基本的に「動くモノ」は大好きで、当然そこには飛行機も含まれるのだが、「動く模型」という条件で考えると飛行機はハードルが高く、いわんやRC機などとても・・と、30年前に諦めていた。

 クルマの模型なら、電動キットもスロットカーもやった経験がある。が、ラジコンはダメ。行きはよいよい帰りは怖いで、対面になると100%操縦不能。地表でダメなヤツが飛行機のラジコンなんて出来るはずがない・・。ところが小林さん曰く、「パソコンのシミュレーター・ソフトがあって、それで5~6時間練習すればRC機を飛ばせるようになりますよ」ホンマかいな? 疑いを抱きつつ、かつWindows用のソフトだということに落胆しつつ(私はMacユーザー)、「まぁ、一度ウチの店に来て触ってみれば」との小林さんの暖かい言葉をいただいて1カ月がすぎ、迎えた運命のX'masイブ。恐る恐るリトルベランカのドアを開けると、小林さんのいつもの笑顔が待っていた。「おっ、いらっしゃい。シミュレーターやる?」勧められるままにシミュレーターの前に座り、プロポを手に取る。左右のスティックで何が動くのかを教わり、「エンコンを上げてエレベーターを引くと離陸するからね」と言われた通りにやったら、画面のなかの機体が宙に浮いた・・のだけど、この時点ですでに小林さんは他のお客さんの応対。いきなりの単独フライト(?)で、すぐ墜落。でも、「意外とやれそう」という理由のない自信が心のなかに芽生えるのに、時間はかからなかった。
 落ちても落ちても、数秒後には機体は滑走路の端っこでアイドリングして私を待っている。ほとんど忠犬ハチ公みたいなヤツだ。可愛い! しばらく落ちずに飛んでいると、もっと可愛い!! しかし飛行機の操縦理論など知らない私は、ラダーで旋回しながらエルロンを逆に動かして姿勢を直す、という無茶苦茶な飛ばし方をしていた。

 それを知ってか知らずか、15分ほどたって小林さんから「飛んでる間は曲技を除いてラダーはあまり使わない。エルロンで旋回して、高度が下がらないようにエレベーターを引く」と貴重な(?)アドバイス。な~んだ、早く言ってよ。なるほど、その方が旋回がゆっくりで安定する。でも、やっぱり落ちるんだな、これが。なのに小林さんは「初めてでこれだけ飛ばせる人は少ない」なんて、ホント、褒め上手。こっちも褒められると天まで昇るタイプだから、冬だというのに汗ばむほど熱中。結局その日は40分ほど遊ばせていただき、リトルベランカを後にした。


初フライトへの大空への道・その2 2001.12.25

 X'masイブに初めてリトルベランカで"リアルフライト"を体験。その感触が忘れられない私は、翌日の夕方に再び店を訪ねた。「シミュレーターですか?」と小林店長。図星なんだけど、それが照れ臭くてしばし店内をキョロキョロ。頃合いを見て、「いい?」と声をかけて昨日と同じ椅子に座る。

 RC機については知識も経験もゼロ。それでも"リアルフライト"なら、少しは飛ばせる。10分ほどたつと、早くも「昨日より上達したかも」などと心の中で自画自賛。ただし墜落を防ぐのが精一杯で、どこに行くかはほとんど機体まかせだ。

 これじゃあイカンと、グルッと周回、8の字など自分で課題を設定して練習に励む。8の字は難しい。対面になると落ちる。でも、だんだん滞空時間が長くなるから不思議・・というか、これが"リアルフライト"のワナ。私のような超ビギナーにとって、「上達」の2文字ほど嬉しいものはない。完全にハマってしまう。

 そうこうするうちに、店に居合わせたお客さんから「エッ、今日で2度目ですか? それにしては巧い」と声をかけられる。この店は店長だけでなく、お客さんも褒め上手らしい。調子に乗って、着陸にチャレンジ。上空を飛んでいると、なかなか滑走路の位置がわからない。そこで、とりあえず滑走路でなくても、どこでもいいから着陸しようとするのだが、何度やっても地面に激突。画面の機体は黒煙を上げる。

 だんだん意地になってきた。離陸してすぐ反転し、上周飛行せずに着陸という練習を反復。着陸態勢に入るだけでも難しい。たまに巧くいったつもりでも、車輪が地面に跳ね返されてボーンとバウンドしてしまう。そのままではまた黒煙なので、バウンドした瞬間にエンコン全開で上空へ。はた目にはタッチ&ゴーみたいな状態だが、私は着陸練習中。なんじゃいな。結局、マグレで一度だけ着陸でき(滑走路じゃないとこね)、それなりの満足感を胸に、"バルサキット製作のコツ"を購入して帰宅した。
 ちなみに、小林さんからは「その本を買ってどうするの? まさか、いきなりバルサキットを作ろうってわけじゃないよね」とのお言葉。「構造の勉強になるかと思って」と私。本音を言えば、RC機に関る何かが欲しかったんだよね。リトルベランカのHPはすでにほぼ読み尽くしていた。ARFキットでも買えば、作るヒマはなくとも眺めて楽しむくらいできるだろうが、まだちょっと早い気がする。で、本を買った。専門誌だから超ビギナーには難解だが、いっぱしのRC機趣味人になったようで嬉しい。小学4年生で自動車専門誌を買い始めたときの気分が、蘇ってきた。


初フライトへの大空への道・その3 2001.12.30

 12月24日に40分、翌25日に1時間、リトルベランカで"リアルフライト"を体験。それから4日間は、前回買った"バルサキット製作のコツ"を読んで過ごし、30日にまた店へ。本で理解できなかったことを小林店長に質問し、パーツやプロポを見せてもらって、いざシミュレーター。私はカフェインとニコチンとアルコールの中毒患者だが、そこにすでに"リアルフライト"が加わりつつある。しかし、わずか4日のブランクだというのに、ちっとも勘が戻らない。上周飛行はなんとかなるが、着陸はまるでダメ。地面に激突か、よくてもボーンと跳ねながらの超ハードランディング。「着陸速度をもっと下げて」と小林さんからアドバイスを受けるが、そう言われてもねぇ。ゆっくり降りてこようとすると、滑走路の遥か彼方で安定を失って墜落してしまう。

 あっというまに1時間がすぎたところで、小林さんが「宙返りと背面飛行やってみようか」。は、はいめん・・? 「エルロンで背面にすると高度が下がるけど、慌てずにエレベーターをアップすれば大丈夫」と小林さん。言われたようにやってみると、これが意外にできる。たまに打ちミスで落ちるが、背面のまま右に左に旋回しちゃったりして!

 さらに意外だったのは、背面をやったら着陸の成功率が格段に上がったこと。エルロンの操作に慣れ、フラフラしながらも姿勢を保てるようになってきたのだ。まだ滑走路に平行には降りれないが、10回のうち8回は滑走路の近くに、またはそれを横切るように、しかも飛び跳ねずに着陸できる。気を良くしたところで終了。本日のフライトはたっぷり2時間、24日以来の通算で3時間40分。小林さんは「次は実機を飛ばしに行きましょう。ウチのブルーマックスを貸すから」とおっしゃるのだが、もう2~3回はシミュレーターをやらせてもらわないと・・。

 でも、ほんの1週間前には考えもしていなかった「大空デビュー」が、現実的なテーマになってきた気はする。「ラジコン飛行機を飛ばすなんて絶対に無理」と30年前に諦めたはずなのに、忘れていた夢が戻ってきた。問題は正月明けから仕事が忙しいことだなぁ。中旬まではリトルベランカにも行けないかも。その間の心の慰めに、ARFキットを買って、仕事の合間にせめてハコでも眺めるか・・。だけど何を買う? ウーン、ここは思案のしどころだ。


初フライトへの大空への道・その4 2002.01.04

 年末にリトルベランカで"リアルフライト"を3回、計3時間40分ほど練習。気分だけはすっかり飛行機少年となった中年オヤジの私だが、困ったことに過去30年余り、飛行機を趣味の目で眺めたことがない。

 子供の頃からのカーキチで、乗り物は何でも好き。自分で動かせるものはもっと好き。RC機への私の憧れは、つまりクルマやバイクの運転の延長上にある。RC機の操縦なんてとても無理・・という積年の思いが"リアルフライト"で「もしかして出来るかも」に変わり、憧れが現実になる期待感に心を躍らせているのだ。

 そこに、小林店長のこんな一言。「初フライトにはウチのブルーマックスを貸すとして、ところで有元さん、どんな飛行機が好きなの?」 そうそう、やっぱり自分の愛機が欲しいよねぇ。バルサキットを作る時間も技術もないから、1機目は当然ながらARF。それでも完成はかなり先だろうけど、キットを眺めているだけで心安らぐに違いない。だが、しかし・・、オレの好きな機体って何だ? 

 心は30ウン年前にタイムスリップ。隼、疾風、マスタング、サンダーボルト・・思い浮かぶのは第2次大戦中の戦闘機ばかりだ。いずれはそんなスケール機を飛ばしてみたい気持ちはあるが、まだシミュレーターしか経験していない超ビギナーの1機目に、それが向かないのは私でも想像がつく。そこで正月休みを返上して(?)パソコンに向かい、飛行機やRC機関係のHPをむさぼり読んで「好きな機体」の発見に努めたのだが、どうも決め手がないんだなぁ。

 困ったときのリトルベランカ。3日夕方に今年初めて店に行き、新年の挨拶もそこそこに書籍・雑誌を立ち読みしたり、店内にディスプレイされている機体を眺めたり。小林さんにも相談するのだが、なにせこっちに「こういうのが好き」という趣味がないからラチがあかない。パイパー・カブも可愛いし、リトルベランカのHPに登場するフォッカーD-VIIもよさそう。おいおい、まるで違う機体じゃないか。

 小1時間たって、小林さんが「あれは?」と指差したのがK&S製シルキーウインドの高翼機。グラスファイバーで成形された胴体の曲線がカッコいい。そう、飛行機に限らず、私はこういうエレガントなカタチが好きなのだ。でも、もうちょっとスケール機っぽい(私にとって見慣れた飛行機っぽい)雰囲気が欲しいかなぁ・・と思案していたところに、「そうだ、これの低翼機もあるよ」の声。さっそくハコを開けてもらう。部品を見てもイメージが湧かないが、説明書の写真で私の気持ちは固まった。

 残念ながら明日から1週間ほど海外出張なので、シルキーウインドGM-Sは手付かずのまま私の仕事場に放置されることになる。機体を買っただけで、プロポもサーボもエンジンもペラも、まだない。接着剤もニッパーも持ってない。ま、焦らずジックリ、楽しませてもらいまっせ。

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